元山 理恵 氏
ナースから医療法人事務長への軌跡
氏名 | 元山 理恵 氏 Rie Motoyama |
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現在の職業 | 医療法人事務長 |
現在の勤務先 | 医療法人社団恵佑会 |
出身大学・学部 | 三育学院短期大学・看護学科卒 中央大学・商学部経営学科卒 学習院大学・経営学研究科博士前期課程卒 |
臨床専門分野 | 内科 |
+αの道に入る前の臨床経験年数 | 3年(パート勤務含) |
+αの道に入った後の臨床経験年数 | 6年 |
+αの道の種類 | 医療経営・介護施設経営, 医療経済学 |
何故+αを選んだのか
私は現在、両親が経営している医療法人で事務長として勤務しています。現在の職につく前は、大学病院の内科病棟で看護師として臨床を経験し、その後中央大学経営学科3年次編入を経て、学習院大学大学院へと進学しました。大学院では遠藤久夫先生の下、現在の医療政策や医療介護保険システムについて学びを深めました。遠藤先生は、診療報酬を協議する中医協で会長をされており、日本の医療政策において中心的人物の一人であります。遠藤先生にマンツーマンで指導して頂いたことは、私にとって血となり骨となり、現在の大きな財産となっています。
なぜ、私が医療経営に興味をもったのかは、実家が医療・介護施設を経営していた事が大きく関与しています。小さい頃から医師である父の働きぶりを見て育ち、自然と「将来は医師が患者さんに集中できる環境づくりがしたい」と思うようになりました。
「経営」については、高校生のころから興味がありました。ただ、医業で生計を立てていく以上、ライセンスは必須であると考えて、高校卒業後は看護短大に進学し、看護師免許を取得しました。看護師として充実した日々を過ごしていましたが、ある患者さんの一言で経営を学びたいと強く思うようになりました。病棟勤務時代、患者さんに注射を打ったとき、「この注射一本いくらなの?」との質問に、私は何も答えられませんでした。薬効や副作用、筋肉注射の方法は頭に入っていましたが、価格については想定外の質問でした。その時、患者さんは身体的不安と同じくらい、経済的不安を抱えて生きていることに気がつきました。質問に答えられなかったことがきっかけとなり、医療を取り巻くシステムやお金の流れを学び、患者さんの経済的不安にアプローチしたいと考えるようになりました。
どのようにして+α道に入ったのか
広い視野に立ち、体系的に経営を学びたいと考え、経営学部への大学進学を決意しました。看護師の仕事を続けながら、大手予備校に通い受験勉強を開始しました。高卒後の浪人生達と机を並べての受験生活は、先行きの見えないつらい生活でしたが、第一志望であった中央大学商学部経営学科三年次編入に合格できました。
プラスαの道はどうであったか、何を学んだか
大学在学中に目標にしていたことが3つあります。第1は財務諸表の数字を読めるようになる。第2は中国語をネイティブレベルにする。第3は医療関係者以外の人脈づくり。あっという間の楽しい2年間でしたが、3つの目標を達成することができました。
その後、医療経営について学びを深めるために、遠藤久夫先生がいらっしゃる学習院大学院へと進学しました。ここでは、経済学者としての研究のいろはを丁寧に教わり、本格的な研究に取り組みました。私の看護師というバックグランドと将来性の観点から、「介護施設経営」を専門に決め、研究に取り組みました。研究を通して、介護の分野で活躍する方々(介護施設長・訪問看護師・ケアマネージャー・在宅医・介護職員)に直接お会いし、座談会やインタビューを通して現行の介護保険制度の問題点を言語化していきました。その中で、平成18年よりスタートした「介護サービス情報の公表制度」がタイムリーな話題であったので、卒業論文に選びました。研究するにあたり、一番苦しんだのは統計学でした。研究室で先輩に助けられながら、統計ソフトと格闘したのが懐かしく思い出されます。
大学院時代は研究浸けの毎日でしたが、濃く充実したものでした。大学院で得たものが3つあります。第1に研究者としての基礎知識、心構えを学んだこと。第2に遠藤先生をはじめ、一流の経済学者達とのディスカッション。第3に医療経済学の分野で活躍する方々との人脈です。
現職に+αはどう生きているか、または現職が+αそのものの場合は、臨床経験が現在どう生きているか
医療機関は医師や看護師といったスペシャリストが大部分を占めており、全体を見渡すゼネラリストの役割が事務長に求められていると感じています。その中で、看護師経験や大学院で学んだ知識は現職に全て生きていると確信しています。
今後どのようにキャリアを形成していくか
「地域の方々が安心して生活できるように、医療・介護のサポートをすること」を目標に、近くデイサービスを新規開業するために準備しています。未定ではありますが、高齢者専用賃貸住宅の施工も視野に入れて動いています。
事務長としてのキャリアを積んだのちは、ノウハウを生かして他の医療施設・介護施設のコンサルティング業務を手掛けてみたいと思います。最終的には、再び大学院に戻り、実務での経験を研究の題材にしたいと考えています。