+αな人

高橋 宏和 氏

目指すは医療界のバスチアン

氏名 高橋 宏和  Hirokatsu Takahashi, MD, PhD
年齢 35歳(2009年9月現在)
現在の職業 松下政経塾 塾生
現在の勤務先 松下政経塾
出身大学・学部 平成11年 千葉大学医学部卒業平成20年 千葉大学大学院卒業
臨床専門分野 神経内科
+αの道に入る前の臨床経験年数 9年
+αの道に入った後の臨床経験年数 休業中
+αの道に入った際の年齢 34歳
+αの道の種類 政治・経営
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何故+αを選んだのか

神経内科医として9年間働いてきました。その間、地域の病院で医師や看護師が疲弊し、中核病院を辞めていく姿を見てきました。その結果、他科へ紹介しても2か月も先の受診になってしまったり、特殊な神経難病を専門外の医師がフォローせざるを得なくなったりと、住んでいる地域によって受けられる医療の内容に大きな差が生じている現状を目の当たりにしました。医療者も患者もどんどん不幸になって、お互いに不信感が増幅していくばかりの現状に疑問を感じ、一人の勤務医としてよりももっとマクロな視点から問題を解決できるようになりたいと考えて、+αの道を選びました。

 

どのようにして+αの道に入ったのか

松下政経塾では毎年7月に塾生の募集を行っています。応募資格は22歳〜35歳、性別国籍等は不問ですが、日本語で研修を受けられることが条件とのことです。書類審査をパスすると、第一次、第二次、第三次選考と審査が進み、数か月をかけて選考が行われます。 書類では、自分が生涯をかけても社会のために成し遂げたいこと(=志)とその方法についての小論文、それをパスすると個人面接や集団討論などの選考を受けることになります。 毎年、百数十名から二百名程度の応募があり、最終的には5〜7、8名が選ばれます。松下政経塾を選んだ理由は、多様なバックグラウンドを持つ仲間と議論を重ねることで自分の視野が広がることと、塾OBを含め社会で様々に活躍する人たちとの「縁」が得られることの二つです。自分の視野を広げるという意味では、海外で学ぶということも魅力的でした。しかし現実的には、今後もずっと日本社会で仕事をしていくことを考えた場合、海外で学んで得られる経験よりも、日本社会における様々な「縁」のほうが大切に思えたので松下政経塾を選びました。

 

+αの道はどうであったか、何を学んだか

医療分野を含め、政治や経済、地域活動など、社会の様々な分野で活躍をしている方々との出会いが豊富にあり、常に刺激を受けている状態です。上級生を含め、塾生同士のバックグラウンドも多彩で、民間企業、官庁、NPOや教師、看護師、自衛官など様々な経験を経て入塾し、「世のため人のため」を目指し日々切磋琢磨しているため、とても視野が広がり、自分を高めている実感があります。松下政経塾OBの政治家や経営者の方々、報道関係の方たちと直接医療問題について話す中で学んだことは、医療現場の問題を医療者でない人々が理解し共感できる言葉で伝えていくことの大事さです。医療費削減や訴訟リスク、悪質なクレームやコンビニ受診の問題などを解決していくためには、医療現場の中だけでがんばっていても限界があります。正しい情報・意見を適切な方法で発信し、社会や医療行政に常にフィードバックしていかなければ、医療現場の状況は悪くなるばかりだと確信しています。

 

現職に+αはどう生きているか、または現職が+αそのものの場合は、臨床経験が現在どう生きているか

2008年3月まで神経内科、特に重症筋無力症などの神経免疫疾患を専門に診療を行ってきました。そのなかで、小難しい難病を患者さんにわかりやすく説明する訓練をしたりしたことが、今、政治家の方など非医療者に医療の問題を説明するのに役立っています。また神経内科の診断で要求される論理的思考方法が、経済や政治史などを学ぶ上でも生きているように思います。

 

今後どのようにキャリアを形成していくか

臨床をいったん離れてみて、自分自身が臨床医としての仕事を愛していることを再認識しました。今後、臨床と関わりながらキャリアを積んでいくつもりです。医療現場から医療行政へのフィードバックのため、中核病院で働く若手〜中堅の臨床医が何を考え、患者さんや社会、行政、政治に対し何を訴えたいか、意見・苦言・提言を集約したいと考えています。医局での愚痴のままで終わらせては声が届きませんし、このまま日本の医療が崩壊していくのを指をくわえて見ているのはとても悔しいですから。また、今後も表面化してくる大学病院や自治体病院、中核病院の経営難を改善できるようなマネジメントスキルやポジションを手に入れ、日本の医療体制の再生を現場から進めていきたいです。私は、アメリカの知識人や学者などがキャリアのある時期にそれまでの職を離れて国や社会のために働き、自分の研究や経験を活かすことで国や社会を良くしていく、といういわゆる「回転ドア社会」に憧れをいだいています。そうしたさまざまな業界の人的交流がさかんな「回転ドア社会」のアメリカでは、オバマ政権において、インド系アメリカ人脳外科医でCNNなどの特派員でもある39歳のサンジャイ・グプタ(Sanjay Gupta)博士が公衆衛生局長官候補に挙がったなど、臨床現場と行政を近付ける努力をしているように思えます。実際に現場と政策決定の場の人の行き来がもっともっと盛んにならないと、いつまで経っても医療現場の現状は政策に反映されないのではないでしょうか。ミヒャエル・エンデの小説、「はてしない物語」の主人公、バスチアンが二つの世界を行き来して両方の世界を健やかにしたように、臨床現場と+αの世界を行き来して両方の世界を健やかに出来ることを夢想しています。

ブログ・ホームページなど

松下政経塾HP

著書など

『松下政経塾講義ベストセレクション 地方自治編』(共著)(国政情報センター)

■症例報告Takahashi H et al. Development of Isaacs’ syndrome following complete recovery of voltage-gated potassium channel antibody-associated limbic encephalitis.  Journal of the Neurological Sciences. 2008他

日経BP記事(共同執筆)『医療崩壊〜医師不足を切り口に〜』(1) (2) (3)

 

ご自身が紹介されたマスコミ媒体など

日経BP 『松下政経塾「素志研修」見学記』

 

 

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