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杉田 玲夢 氏

「医師版ミシュランガイド」が患者も病院も救う

氏名 杉田 玲夢, Reimu Sugita, MD, MBA
年齢 34歳
現在の職業 起業家
現在の勤務先 株式会社クリンタル
出身大学・学部 東京大学医学部 2006年卒業
臨床専門分野 眼科
前回の記事投稿 「病院経営改善で患者さんの力に」(2012年2月)
リンク先  http://rinsho-plus-alpha.jp/people/reimu-sugita
ReimuSugita

1)現在の職業や近況について、医療とどう関わっているかを中心にご紹介ください。

2015年から「すべての患者さんに最適な医療を」という想いのもと、株式会社クリンタルという会社を立ち上げています。この会社では、いわゆる「医師版ミシュランガイド」のような患者さん向けのウェブサイトを運営しており、130ほどの疾患に対し1,200人以上の名医が検索できるようになっています。また同時に受診先に悩める患者さんに対して、最適な受診先を提案するサービスも行っており、これら2つのサービスを通じて、患者さんが最適な医師を受診するサポートを行っています。

我々の事業が広く医療業界に与える影響として3点あります。

まず1点目はもちろん、患者さんが最適な医療が受けられるという事。やはりいかにDPCデータや病院情報が公開され始めたとはいえ、一般の患者さんがそれを適切に解読することはほぼ不可能に近いです。そのため、我々側で専門的なデータ・情報を解釈し、最適な受診先を提案します。

2点目は、医療費の削減です。アメリカにも論文やシミュレーションがいくつかありますが、やはり経験を積んだ医師による手術の方が合併症や再入院率が低いです。そのため名医受診により、入院日数の削減や無駄な薬剤の使用が抑えられ、広く日本の医療費を削減できる可能性があります。

そして3点目としては、医療の質の向上にも貢献できると考えています。医師情報をある程度見える化することで、患者さんが自分の疾患の治療経験が豊富な医師・病院を選択するようになります。病院としては、強みのある診療科・疾患領域に患者さんが集まるので、その領域をより強化する、そして結果としていわゆる病院のセンター化が進むと考えられます。センター化が進む事で、現場の経験値が蓄積され、各病院における医療の質の向上と効率化が進むと考えています。

2)前回登場時から、現在に至る経緯についてご紹介ください。

前回出させていただいた時はまだ2010年でMBA取得中でした。ビジネススクール卒業後、ボストンコンサルティンググループという経営コンサルティング会社に入り、製薬会社や医療機関を主なクライアントとして課題解決の提案を行っていました。プロジェクトのテーマとしては、中長期的な戦略立案・収益改善から製薬会社のMRの教育・新薬開発の効率化までというように幅広く、また製薬会社・医療機関の各部署の方と密接に働くことができて、それぞれの課題やモチベーションなどが非常によくわかりました。

その中で、前回の記事でも書かせていただいた「総合病院の乱立による競争の激化」に関して、何度か考えさせられる事がありました。ある地域の病院長の話を伺いに行った際に、地元の市民は全て我々が守るんだという強い想いがあり、なんとか人をかき集めて全診療科を少人数でがんばって運営しているということをおっしゃっていました。確かに想いとしては素晴らしいのですが、それが最適な医療のあり方かと言われるとそうではない気がしました。実際、大手術の際には助手を遠くの大学からレンタルしてくるなど、かなり診療にリスクのある状態でした。やはり上記で述べたような病院のセンター化による機能のすみ分け、2次医療圏内での機能の相互補完がいいのではと思います。

そこで「医師版のミシュランガイド」のようなものがあれば、センター化が進むのではと思いつきました。経営母体が違う各総合病院を協力させて、相互補完の状態にするのはなかなか時間がかかりそうですので、逆に患者側を動かす事で、自然とその状態にならないかという発想です。そこで起業をして実践する事にしてみました。

またこのサービスを立ち上げた背景にはもう1つ、個人的な理由があります。医療関係者の方はみなさん心当たりがあると思うのですが、30代になってかなり友人・知人から「いい病院知らない?」など受診先を聞かれることが増えました。ちょうど親の病気が増えてくる世代でもあり、子育てし始める世代でもあるからです。聞かれる度に、最適な受診先を探すということへのニーズの強さを感じ、また医療関係者といえども実際聞かれてもわからない分野が多いことから、診断のついた患者さんが簡単に受診先を探せるサービスの必要性を実感し、患者さんのニーズもあり、医療業界の役にも立てるならとやってみる事にしました。

3)今後どのようなキャリアを形成していきたいか教えてください。

正直、今後どういうキャリアを歩むのかは全くわからないです。前回の記事を書いた際にもわからないと書いていますが、その際5年後に自分が起業しているとは想像もしていませんでした。ただ、「全ての患者さんに最適な医療を」という想いは、医学部卒業後から医師時代、コンサル時代を通じて、一貫して持ち続けていますので、それに沿ったキャリアになることは間違いないです。

まずは直近の目標としては、我々のサービスを1人でも多くの患者さんに使っていただき、受診先の最適化を少しずつ図っていきたいと思っています。

4)同じ道を志す方へのメッセージ

自分自身そこまで将来が見えているわけではないので、大きな事は言えないのですが、どの道を進まれるにしても、1.何か一貫した想いがあること、2.自分で選択すること、は大事にしてほしいと思います。

個人的にはゲームは好きなのですが、医療業界がゲーム業界などと違うのは、やはり大きな解決したい課題があってそのためにできることを皆が探しているという、社会的課題ありきであることだと思います。そこへのアプローチとして、公務員になったり、コンサルをやってみたり、臨床をやりながら情報発信をしてみたりという事だと思うので、その根本の想いさえぶれなければどのキャリア選択でも大丈夫ではないでしょうか。
また、どの道を選んでもそれなりに大変なので、自分で選択することが大事です。どこにいても他のキャリアはよく見えがちですが、流されて流行りの業界にいってみたりすると、あまりいいことはないように思います。白衣を脱ぐのも大きなリスクですし、自分で選んだのだからなんとしてでも頑張るぞという意識じゃないとどこにいっても頑張りきれない気がします。

私自身は、どこにいっても何をしていてもどんな状況でも楽しむ事をモットーとしています。将来はまあなんとかなるかなという楽観的な考えと、何があってもなんとかするという覚悟で過ごしています。そんな私でよければいつでもご相談にのりますので、連絡ください!

ブログ・ホームページなど

クリンタルホームページ : https://www.clintal.com

ご自身が紹介されたマスコミ媒体など

・THE BRIDGE
「56の疾患をまたいで500人を超える名医が検索できる「クリンタル」、受診先提案サービスの提供も」
http://thebridge.jp/2015/11/clintal-tells-you-your-go-to-doctor
・coFFee doctors
「「clintal(クリンタル)」名医検索サイトが挑戦する課題」
http://coffeedoctors.jp/news/1609/
「「clintal(クリンタル)」名医検索サイトで地域医療も変わる」
http://coffeedoctors.jp/news/1613/
・Bizreach Frontier「日本の医療サービスを最適化する、医療版ミシュランガイドを」
https://frontier.bizreach.jp/health-care/clintal/
・日経メディカル
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cadetto/tuusin/201603/546241.html
・ヤフーニュース(CNET)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160323-35079947-cnetj-sci
・The Bridge
http://thebridge.jp/2016/03/clintal-funding
・Techcrunch
http://jp.techcrunch.com/2016/03/23/clintal-seed-funding/
・日経産業新聞
http://www.smartmed.jp/nikkei-news/332/node_3009003#?
・産経ニュース(PR times)
http://www.sankei.com/economy/news/160323/prl1603230174-n1.html

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