+αな人

中山 久仁子 氏

すべての人に医療と教育を−アフリカでの臨床とロンドン留学を通して

氏名 中山 久仁子 氏 Kuniko Nakayama, MD, PhD, MSc. DTM&H, LFHom
年齢 38歳(2009年3月現在)
現在の職業 医師、会社取締役、医療法人理事
現在の勤務先 (有)メファ・マネジメント、医療法人上田眼科
出身大学・学部 藤田保健衛生大学 医学部医学科 1996年卒業・東京大学大学院医学系研究科内科学 生体防御免疫学 博士課程 2005年卒業
臨床専門分野 内科、感染症
+αの道に入る前の臨床経験年数 7年
+αの道に入った後の臨床経験年数 0年
+αの道に入った際の年齢 33歳
+αの道の種類 熱帯医学、国際保健
photo_nakayama[1]

何故+αを選んだのか

小さい頃から、将来は医療の仕事に就きたいと思っていた私は、途上国に関する本や報道を見て、途上国の医療に興味を持ち、いつか医療の十分でない地域で人々を助ける仕事をしたいと思っていました。そして、小学生の頃から国際援助活動しているNGOに参加し、その思いを温めながら医学部に入りました。

当時の私は、「日本の医療は進んでいて、途上国は医療にアクセスできずに困っている人が大勢いるので、日本で医学をしっかり身につけて人々を助けに行きたい」と、日本で学んだ医療を持って、早く途上国の人々の役に立ちたいと、単純に思っていました。

 

どのようにして+αの道に入ったのか

医師になって5年目に、青年海外協力隊出身の先輩医師に同行して、アフリカで医療ボランティアをしました。今思えば、見学に近いものでしたが、現地で臨床をするにあたり、自分に足りないもの、必要なものを自覚しました。

その2年後に長期でマラウィ共和国の首都にある国立病院で臨床をする機会を得ました。その時は、知人の現地医師の仲介もあり保健省に行って交渉しました。何度も省に足を運び、勤務開始まで約2か月かかりました。そして、マラウィでの経験を通じて、熱帯医学と国際保健を本格的に学びたいと思うようになりました。熱帯医学の臨床と国際保健を学べる場所は世界に数か所ありますが、アフリカとのつながりが強く、その教育内容が充実していると言われている London School of Hygiene and Tropical Medicine (LSHTM)に入学しました。

 

+αの道はどうであったか、何を学んだか

マラウィの病院では現地の医師と同じように、毎日朝から晩まで患者さんの治療にあたりました。現地の医師と同じ境遇で働いたことは、非常に貴重な経験でした。

マラウィでの経験から、沢山のことを学びました。まずは、日本と途上国では疾患が違うこと。疾患が違うというのは、日本ではほとんど見なくなった回虫などの寄生虫や狂犬病、気候が違うために日本で見ない病気、例えばマラリアなど、主な疾患は私が経験したことのなかった熱帯感染症でした。そういった日本の医学部ではあまり勉強しなかった病気は、現地の医師や看護師から教えてもらったり、熱帯医学の本を調べたりしてまさに現場で患者さんを通じて勉強していきました。

二つ目は、全ての物が手に入るわけではないという状況下での医療。医薬品、医療機器、医療従事者が慢性的に不足しており、投薬していた薬が切れたため、他の薬に変更しなくてはならないことや検査機器の試薬が切れたために、基本的な検査ができなくなります。そういう状況が日常茶飯事で、そういったことに対処するための薬の知識と、検査機器に頼らない診断能力の向上が大切でした。

さらには、患者さんの病気の背景には、様々な状況がバックにあり、眼の前にいる患者さんだけを病院にいて治すだけでは足りないこと。また、正確な現場のデータを集積、処理できておらず、世界に発信されている情報と現場の状況には、ずれがあること。

現地では様々なことを目の当たりにし、その意味を自問自答する日々でしたが、私は、まず自分に足りなかった熱帯医学・感染症と公衆衛生学を学びたいと感じ、その場所がLSHTMでした。

LSHTMでのコースは、とても楽しいものでした。正直、こんなに楽しい学生時代はなかったほどです。特に素晴らしかったのは、講師陣の卓越した知識と教授スキル、また世界中から集まった素晴らしいクラスメイトの存在でした。日々の講義のテーマは、マラウィの仲間と患者さんから教えてもらった内容が多く含まれていました。私が現地で感じた疑問点や、私に足りなかった知識が、講義で取り上げられることが多かったので、それらのことを深く学ぶことができたことが充実感につながったのだと思います。さらに、「勉強したことを、将来、現地で困っている人々のために役立てたい」という目的意識が、モチベーションにつながったと思います。

 

現職に+αはどう生きているか、または現職が+αそのものの場合は、臨床経験が現在どう生きているか

私がマラウィでの経験を通じて一番感じたことは、日本の医療と途上国の医療は違うということでした。当たり前のように思われるかもしれませんが、高度であるか、という問題ではなく、対象、アプローチ、必要な手法が全く違うのです。

進んでいる日本の医療を途上国の人々のために実践したいといった考え方は、全く的外れで、現地にはその現地に合った医療があるのでした。それに似たものを、あえて日本の医療に探すならば、へき地医療、農村医療に近いものでした。

また、援助の限界も知りました。援助が単に悪いのではなく、援助だけでは不十分で、現地はもっと異なる介入も必要としていました。

マラウィでの経験とLSHTMでの学びそのものが、その後の私の目標に大きく影響しました。

今後どのようにキャリアを形成していくか

マラウィから帰国して、(有)メファ・マネジメント (MEFA management Co.Ltd.)という会社を設立しました。この会社のミッションは『すべての人に医療と教育を』。

「人々が自分の望む医療と教育の機会を、自らの意思に従って選択、享受できる」、そんな社会づくりに貢献することを使命としています。

今、まだ弱い立場の人々に最低限の医療と役に立つ教育が届いていない現実があります。私たちは、そのような弱い立場の人々の健康を維持するための活動、自立支援、教育のサポートを行っていきます。また、私たち日本人も活動を通じて、国際人として高揚することに寄与したいと思います。

数年後を目標に、愛知に拠点となるクリニックを設立し、その地域への医療貢献と、途上国での医療活動を中心にその地域の社会開発支援を行っていく予定です。

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