+αな人

狭間 研至 氏

外科医が創る薬局3.0

氏名 狭間 研至 氏 Kenji Hazama, MD, PhD
年齢 43歳
現在の職業 会社役員 など
現在の勤務先 ファルメディコ株式会社
出身大学・学部 大阪大学医学部 平成7年卒
臨床専門分野 呼吸器外科
+αの道に入る前の臨床経験年数 7年
+αの道に入った後の臨床経験年数 11年
+αの道に入った際の年齢 33歳
+αの道の種類 経営
狭間 研至

何故+αを選んだのか

現在のわが国の医療は、医療従事者の献身的な働きと、患者さんの辛抱の上にようやく成り立っているのではないかと感じていました。

たとえば、医師の労働環境は、比較的厳しいケースが多く、医療訴訟のリスクも背負っています。勤務医の収入は世間的な平均からは高いですが、リスクとの兼ね合いを考えると決して高いとは言えません。

その一方で、患者さんは、医療者に対する気兼ねや、3時間待ち、3分診療という状況もあってか、日本の医療提供体制に対する満足度は、決して高くはないのです。

大学病院の呼吸器外科医として臨床、教育、研究に携わる中で、医師の過労死問題や、モンスターペイシェントの問題、病院の入院期間短縮に伴う患者さんの戸惑いなどいろいろな課題があると感じましたが、一臨床医として手が出せる範囲には自ずと限界があるのではないかと思っていました。

そうした中で、実家の薬局の薬剤師教育に携わる機会があり、これからの地域医療の中で、薬局の機能拡張、薬剤師の職能拡大ということが重要ではないかと感じるようになりました。

このことが、自分が考えてきたジレンマを解消できるきっかけになるかも知れないと考え、二次創業の形で転身しました。

どのようにして+αの道に入ったのか

大学院生時代、薬局の薬剤師がお客さんに「家族が、肺が真っ白と言われたのだが、どういう意味か?」と尋ねられて困ったということで実家の母(当時の社長)から電話がかかってきました。

そこで、レントゲンを持っていき、薬剤師に説明したのですが、解剖・生理・病理をきちんと理解できていないと感じました。医薬分業の時代に、薬剤師がこのような状態では地域医療のレベルが保てない、薬剤師にもちゃんとした生涯教育が必要だと思ったのですが、そうしたシステムが業界には無かったのです。無いのなら自分で作らなくてはと考えて、月に2回薬剤師向けの勉強会を始めたのがきっかけです。

薬局を手伝い始めてから1年あまりは、医学的側面でのみ薬局の手伝いをしていたのですが、10年ほど前に診療報酬の改定による収益の悪化という出来事があり、経営にも関わるようになりました。薬局の収益を改善するために自ら会社の経理の資料を読み、それまではその存在すら知らなかった損益計算書や賃貸対照表、資金繰り表などにも取り組みました。

さらには、若い薬剤師を集団として率いてマネージメントすることに母の限界が見えてくるようになり、集団の中で働いてきた立場として薬剤師への接し方を母にアドバイスするようになりました。一方で、自ら人材マネージメントや組織経営、リーダー学に関する本を読み、コーチングを受け、自身にスキルを身に付ける努力をしました。

薬局の経営に関わるにつれ、銀行や大学の薬学部でこれからの経営ビジョンについての説明を私が行う機会も多くなりました。また、外科医が薬局の店頭に立つということが珍しいということもあり、業界紙の取材を受けるようになりました。連載を持たせてもらうようにもなり、外科医だけでは味わえない面白さを感じるようになりました。

+αの道はどうであったか、何を学んだか

武士の商いではありませんが、いわゆる商習慣やビジネス一般の話、経理のことなど、戸惑いが多かったです。

「お医者さんなのですね」と驚かれることは少なくありませんでしたが、それが、薬局という小売業ビジネスでダイレクトなメリットして感じられることはほとんどありませんでした。

また、いわゆる「調剤薬局」というビジネスモデルで、特定の場所を極端な場合には上場企業と取り合いをするというところでは勝ち目はないと考えました。そこで、昔の町の薬局を第一世代(薬局1.0)、今の処方箋調剤専業の薬局を第二世代(薬局2.0)と定義して、少子超高齢社会に突入したわが国で本当に求められるべきは、従来の処方箋調剤に加え、在宅療養支援やプライマリケアにも積極的に参画できる次世代型薬局(薬局3.0)というコンセプトを作りました。

しかし、それがきちんと機能するかどうか、採算性、事業性はあるのかどうかということを客観的に考える必要がありましたが、それらを大阪市の外郭財団法人が主催するビジネスプラン評価事業に応募し、認定を受けるなどして理論構築し、実践へと移行しています。
現職に+αはどう生きているか、または現職が+αそのものの場合は、臨床経験が現在どう生きているか

在宅医療や外来化学療法など、現在そしてこれからの地域医療における薬局・薬剤師のあり方を考えた時に、医師とどのように連携を組むかは極めて重要かつ繊細な問題です。私自身、現在は、複数の医療機関に非常勤医として勤務しつつ、実際に地域医療の現場で医業を行っています。大学病院や公立病院での外科医としての活動や、そこで学んだ臨床活動に求められるacademic mindは、私の活動の原動力の一つとなっています。

今後どのようにキャリアを形成していくか

超高齢社会に求められる多職種連携の地域医療モデルについて、理論を構築するとともに、自らの手で採算性・事業性を持ったモデルとして確立したいと考えています。

そのためには、薬局の機能拡張、薬剤師の職能拡大は極めて重要であり、そのための教育プログラムや業務支援体制を構築していきたいのです。

それらの効率化や実用化にはICT(Information and Communication Technology)の活用が不可欠ですが、昨今のスマートデバイスの進歩などは必ずや地域医療の形を変えていくだろうと考えています。

このような次世代型の地域医療モデルは、今後、同様に超高齢社会に突入する先進諸国へ輸出可能なビジネスモデルであり、日本の立国に寄与できるのではないか考えています。

ブログ・ホームページなど

http://www.pharmedico.com/
http://www.hazamakenji.com/

著書など

著書:
・薬剤師のためのバイタルサイン(南山堂)
・薬局3.0(薬事日報社)
・外科医 薬局に帰る(薬局新聞社) など
共書:
・臨床調剤学(南山堂)
・薬物治療学(化学同人)
・新IT医療革命(アスキー新書)
・ITが医療を変える(アスキー・メディアワークス)など

ご自身が紹介されたマスコミ媒体など

NHK ルソンの壺、日本経済新聞
その他、業界メディアの取材、連載など多数

起業情報

業種:薬局運営、医療情報システム開発、薬剤師生涯教育
会社種類:株式会社、資本金:50百万円
資本金の出所:本人、家族、投資ファンド
役員人数:3人、他の役員のバックグラウンド:薬剤師、システムエンジニア
起業した年:2004年、起業準備に要した期間:3年

医療従事者が起業するためのアドバイス

臨床経験、研究経験は、専門医や学位の取得など、ある程度の区切りまでは必要と思います。
その中で、自分が問題や課題と感じたことを、ビジネスとして採算性、事業性、永続性を保った形のなかで解決していきたいという目的、コンセプトの確立が重要だと思います。起業やビジネス界への転身は目的ではなく手段だと思います。生涯一医師として、患者さんと向き合う時間を持つことはいろんな意味で重要と思います。

 

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