+αな人

榊 茜 氏

看護教材開発を通して看護界の架け橋へ

氏名  榊 茜氏 Akane Sakaki, RN, MSN
年齢 32歳
現在の職業 事業開発部 コンテンツ開発
出身大学・学部・卒業年度 東京医科歯科大学・医学部保健衛生学科看護学専攻・2002年度
東京医科歯科大学大学院・保健衛生学研究科修士課程・2010年度
臨床専門分野 主にがん看護
+αの道に入る前の臨床経験年数 約5年
+αの道に入った後の臨床経験年数 なし
+αの道に入った際の年齢 30歳
+αの道の種類 語学、教材開発
榊 茜

何故+αを選んだのか

元々看護師にすごくなりたかったというよりは、“手に職を”という両親の勧めや他の現実的な理由で看護系の大学に進学しました。そのためか授業も実習もいまひとつピンとこなかったのが正直なところでした。

4年生の時に色々な場所で活躍している卒業生の話を聞ける機会があり、「看護師の資格をとったからといって、必ずしも病院でなくてもいいんだ。その 資格を活かして別の仕事ができるなんてとても魅力的だ!」と看護師資格の可能性をその時感じたことを覚えています。それから特別に意識していたわけではな いですが、看護師=病院という枠からはずれるのもありだと心のどこかで思っていました。

しかし、働いてみると思っていた以上に看護の仕事はおもしろく、医療の中で占める看護師の役割の大きさを実感し、看護師になったことを誇らしく思うようになりました。

3年間の臨床経験後、語学(+α)留学で訪れたアメリカでは様々な医療施設で見学実習をし、それぞれの場所で素敵なナースに出会いました。彼らの多 くは「自分の仕事が好きだし誇りを持っている、働き方(勤務形態)にも納得しているわ」と笑顔で語り、1日ぴったりとついてまわってくる外国から来た研修 生にも懇切丁寧に説明してくれる余裕すらありました。垣間見ただけですが、色々学べた実習の中で心に残ったものの一つが「(身体的にも精神的にも)余裕が ある働き方」でした。

帰国後に就職した病院では、日勤深夜・準夜日勤の勤務体制がどうしても自分には合わず、まったく余裕がない状況でした。その中でも患者さんのために 心を砕き一生懸命な同僚・先輩の姿を見ながら、「私も頑張らなくては」と思う一方で、「彼らを支援するのは誰なんだろうか、熱意だけでは体は続かない。働 きやすい環境ってどうしたら作れるのだろうか」と考えるようになりました。

悩んだ末に母校の大学院の看護管理分野で学ぶことを選択しました。「現場で頑張るナースのために何かできることをしたい」 これが私の看護+αをつくる大きな要素となりました。

どのようにして+α道に入ったのか

院生の時にご指導いただいていた先生から「エルゼビアでナースのアルバイトを募集していますが、榊さんどうですか?英語もできると尚良いみたいです よ。」と声をかけていただいたことがきっかけでした。アルバイトとはいえ、自分に求められている能力があるのかどうかが不安で少し悩みました。でも新しい 可能性が拓けるかもしれないと考え、アルバイトを始めました。

数カ月が経ち、大学院卒後の進路を考えていた時に正社員のお話をいただきました。「このようなチャンスはもう二度とないかもしれない!」と思い、迷 わず是非とお答えしました。そのお話をいただいた日の帰り道、本当に実現した新たなキャリアに大変興奮し、正式に届いたオファーレターを読み返し、不安に 勝るワクワクな気持で胸がいっぱいになりました。

プラスαの道はどうであったか、何を学んだか

エルゼビアという歴史ある出版社で働き始め、すべてが初めて知ることばかりでぐんと世界が広がりました。私の仕事は、ナーシング・スキル日本版とい う看護技術を動画で学び、看護手順を管理できるオンラインツールのコンテンツ開発です。1年間の予算の中でどのコンテンツをどのように開発するかスケ ジュールをたて、内外のリソースを利用しマネジメントします。

メインの仕事であるコンテンツ開発以外にも、開発した製品をどうアピールするかのマーケティングと実際に顧客のもとへ出向くセールス、また導入後の カスタマーサポートの仕組み、顧客のペインポイントを踏まえた新規事業の開発、それぞれに看護師の視点で少しずつ関わらせていただいています。そのひとつ ひとつが面白く、医療とは関係なく自分が普段何気なく購入している商品にも同じようなプロセスがあることが分かりました。

現在導入施設が増えてきて、一層コンテンツ面での責任の重さを感じています。しかし看護部の教育担当の方、また現場で実際に使うスタッフナースの方に「新人教育に使っています!」「内容がとてもいいです」と言っていただくと、とてもやりがいを感じます。

現職に+αはどう生きているか、または現職が+αそのものの場合は、臨床経験が現在どう生きているか

短いですが臨床経験があり本当に良かったと思う場面が多いです。そもそも臨床経験がなかったら採用されていなかったかもしれません。

私が意見を求められる時は、「看護師」としての意見が必要とされていることが殆どですので、そのたびに「この意見はちゃんと現場のナースの意見を代 弁できているか」と自問します。結果「なるほどね」と納得してもらえるのは臨床経験があることが大きいのではないかと思います。もちろん臨床を離れてしば らく経ち、状況は変化しているので、外から出来る限りの情報収集に努めています。その際には今までお世話になった看護師の先輩・後輩・友人にとても助けら れていると感じます。

また製品セミナーや、導入事例の取材など直接看護部の方々や看護師の皆さんとお話をする機会も多いです。その時には同じ言葉で話せる、より現場の悩みなどに共感できるという強みがあると思います。

そして大学院で看護管理とは何か、看護管理者とはどんな役割を担う人たちかなどを学んだことは、製品導入の窓口となる看護部(管理者)の方々のニーズなどを理解することに大変役に立っていると感じます。

今後どのようにキャリアを形成していくか

ナーシング・スキル日本版という製品は、「看護技術の標準化」を実現する可能性をもっていると思います。現在ユーザーの看護部長さんからも、この製 品をプラットフォームに施設の枠を超えて、より良い看護の技を集約できたらいのではないかという声をいただきます。夢のような話かもしれませんが、そのよ うな大きな目標があってもいいと思っています。

大学院修了の際にこの機会を初めに提供してくださった先生からのメッセージは「社会の中で看護・看護師のプレゼンスを高めてくださいね」というものでした。

エルゼビアの社員としてよりよい製品開発を通し会社に貢献することで、看護師のプレゼンスを高めたいです。一方で、「看護師の役に立つ、看護師に とって便利なものづくり」というテーマはぶれずに、現場の声を製品に反映する姿勢は忘れずに、社会と看護界の橋のようになれればと考えています。

ブログ・ホームページなど

エルゼビア・ジャパン株式会社
ナーシング・スキル 日本版サイト

著書など

看護師が働き続けられる労働環境とは -デンマークの看護師の労働環境に関する報告より-,
Nursing Business, 4(7), 586-590, 2010. メディカ出版

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