+αな人

岡田 直美 氏

ビジネススクールでの学びを臨床に活かしたい

氏名 岡田 直美 氏 Naomi Okada, MD, PhD, MBA
現在の職業 勤務医
現在の勤務先 国家公務共済組合連合会東京共済病院
出身大学・学部 千葉大学医学部
臨床専門分野 腫瘍内科、呼吸器内科
+αの道に入る前の臨床経験年数 15年
+αの道に入った後の臨床経験年数 3年
+αの道の種類 経営学
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何故+αを選んだのか

2005年8月1日、家族ぐるみで親しくしていた同僚の医師が、4ヶ月の経過で亡くなったことが最大のきっかけでした。“人生は一度しかない”ということを痛感し、“やりたいことをやりたい時にする。後回しにはしない”という気持ちになり、MBAを取ることにしました。

ビジネスについては、医学部大学院時代に慶應出身の友人達と業種を超えて交流し、その頃から興味を持っていました。通常の診療では来院された患者さんにお話を伺い、診察と検査をして、それらの情報と知識とこれまでの経験を用いて診断し、その診断に基づいて治療を行います。そして、新たな検査の情報や治療経過をもとに逐次病状把握を行います。つまり、主に必要なのは課題発見能力です。

一方ビジネスは、課題を”発掘”することで新たな産業ができたり、より自由な発想で展開できたりするイメージがありました。病気というネガティブな題材ではないことや、より広い分野、視野(たとえばグローバルな視点)で物事を考える点などに惹かれていました。

医学部大学院を修了し臨床に戻って非常に忙しくなり、医療に没頭する日々が続きましたが、臨床経験が10年を超え、自分の専門分野において一人立ちした頃から、再びビジネスに興味を持つようになりました。ただ当初は、臨床を引退してから学ぼうと思っていました。

自分の学んできたものだけでは足りない、ビジネスを学びたいという気持ちを潜在的に持っていて、最後に同僚の無念の気持ちが私の背中を押してくれた、ということだと思います。勤務医はどんなに勉強をしても、受け持ちとして責任をもって診る患者さんとして、常にせいぜい200人程度の範囲でしか貢献できません。違った視点でより多くの患者さんに貢献できるようになりたいと思いました。

どのようにして+α道に入ったのか

ビジネスについては“学ぶ”のが私の目的でしたから、ビジネススクールは国内の自宅から通いやすい慶應ビジネススクール(KBS)を選びました。KBSを選んだ理由は、①自宅から近かったこと、②慶応義塾大学出身の友人がたくさんいたので馴染みがあったこと、③歴史があり日本で最初のビジネススクールであること、④企業からの派遣も多いこと、⑤受験自体が間に合ったこと、などです。

歴史については、出身の千葉大学医学部に100年以上の歴史があり、その価値を感じていました。偉大な先輩がいることの誇りや、優秀な先輩方とも同門ということですぐに親しくなれることなどです。兄が派遣で国際大学大学院の1期生だった時に友人達との楽しそうなやりとりを聞いていたので、企業派遣の優秀な友人との交流も楽しみでした。思いたったのが8月でしたから突貫で仕上げて間に合わせました。どうしてもという気持ちがあれば、忙しい診療の合間を縫って、集中して短い時間で書類を用意することができるものだと思いました。

どのようにして+α道に入ったのか

当初はまったく新しい科目ばかりで苦労しましたが、ある時から医師の診断プロセス・治療戦略が現状把握・課題発見・戦略の策定とアナロジーがあることに気が付き少し楽になりました。

KBSでは1年目が基礎科目を主に授業(ケーススタディ)で学び、2年目でゼミに属して論文を作成します。1年目にinputした知識をもとに2年目に論文作成というoutputをする、ということで多くの学びがありました。

また医療政策の第一人者である田中滋先生のゼミで、臨床医をしているだけでは気が付くことが難しい視点を学ぶことができました。

田中滋先生に出会う前は、自分本位ではなく患者本位で考えようとしていれば、 広い視野でものを考えられているのだと思いこんでいました。しかし、その患者本位も偏った見方であったと気づきました。たとえば、辛い思いをしているがん患者さんへのリラクゼーションを保険適応にしたらいいと考えていましたが、一方それは、保険で“強制的に集めたお金”を、医療とはいえない分野に注ぎ込むことになること、それは本来の保険の意義や公平性からは“ずれている”ということを学びました。改めて“医療とは”ということ考えさせられ、この道を選ぶ前より視野が広がった、もしくは本当に広い視野でものを見る努力をするようになったと思います。

現在はあたかも入学前と同じような職場に復帰してしまっているようですが、異業種の人たちと医療を社会的側面から捉えてdiscussionすることも多くなり、仲間たちと臨床以外でも社会貢献ができる素地を得たことを実感します。新たな展開ができるような夢をもつことができるようになりました。

現職に+αはどう生きているか、または現職が+αそのものの場合は、臨床経験が現在どう生きているか

MBAで学んだすべての科目が役立っています。例えば、部分最適と全体最適という概念、病院が専門職で構成されているという認識、そして専門職は(病院の)中より外の評価を重視しやすいこと、などを理解できたことにより、病院での様々なバランスのとり方を判断しやすくなりました。また病院がおかれている経済的な状況も財務諸表を見ればわかります。医療の社会的側面を判断するにあたって、ビジネススクールで学んだ概念、考え方、知識が役立っています。

一番役立ったことは、“医療とは(定義)”、“医療の価値とは”というレベルで医療を捕らえる事ができるようになったことで、医療についての自身の考え方がぶれなくなったということだと思います。

更に、修士論文作成にあたり知り合った人たちとの人脈がそのまま医療に役立っています。学生として取材に行くことで、医学界の重鎮など人脈がかなり広くなりました。
病院では経営についての何かに今のところ参加していませんが、今後私的な勉強会をすることを事務長と申し合わせています。ビジネススクールの基礎科目をひとつずつ勉強していこうと思います。一番最初の科目は組織学です。その他、財務会計や生産などの科目、マーケティング戦略などすべて医療に活かせると思います。

今後どのようにキャリアを形成していくか

病院という組織に属しているので、病院の経営面で少しは貢献したいと思っています。ただそれは私のライフワークではありません。日本のすばらしい医療技術、あるいは医療に応用できるであろう技術を駆使して、“治らない病気を治すこと”が私のライフワークです。

“治らない病気を治す”ためには、医療の発展が不可欠です。そして医療の発展には、医療者以外の様々の立場の人と手を携え続ける根気強いアプローチが必要です。また幅広いネットワークも必要です。何かを発展させるには、自分が思っているよりもっとたくさんの要素が必要であることを、ビジネススクールで気づかされました。

今後は心ある人たちとネットワークを作って、私のライフワークである“治らない病気を治す”ことに、ビジネススクールで学んだことを活かしていきたいと思っています。

ブログ・ホームページなど

東京共済病院のホームページ 腫瘍内科
http://www.tkh.meguro.tokyo.jp/senmon/shuyouka.html

著書など

新医療

ご自身が紹介されたマスコミ媒体など

女性セブン、毎日新聞
教育テレビ「今日の健康」(2011年3月23日放映 テキストあり)

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