+αな人

冨岡 慎一 氏

超高齢社会に持続できる医療制度を構築したい

氏名 冨岡 慎一氏 Shinichi Tomioka, MD
年齢 34歳(2011年6月現在)
現在の職業 研究員、内科医師
現在の勤務先 松下政経塾(~2011年3月)、産業医科大学 公衆衛生学教室(2011年4月~)
出身大学・学部 九州大学・医学部・2003年
臨床専門分野 内科・プライマリケア
+αの道に入る前の臨床経験年数 5年
+αの道に入った際の年齢 31歳
+αの道の種類 医療政策
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何故+αを選んだのか

都内の救急病院で勤務医として働いていた際に、我が国の医療はこのままでは成り立たなくなるのではと感じ始めたことがきっかけでした。過酷な勤務体系や急増する医療訴訟、乏しい医療財政という現状に加え、今後未曾有の超高齢社会に直面する日本の将来の医療制度に強い危機感を抱き始めたのです。

現場の医師としてすぐに何か行動を起こす訳にはいきませんでしたが、常に頭の中には将来の医療制度全体に対する懸念があり、どこかで一度勉強をしてみたいという思いをもっていました。ただ、思いだけはあっても臨床の忙しさに溺れてしまい、なかなか勉強することもできないまま、時間だけが過ぎていきました。

どのようにして+α道に入ったのか

そんな折、たまたま松下政経塾というものを知り、医療制度についても勉強できるようだったので、一度だけのつもりで物の試しに入塾選考を受けてみました。

正直、その頃の自分はまだ松下政経塾について詳しく知りませんでした。Panasonicの創業者である松下幸之助が数十年前に設立した私塾で、政界などに多数の人材を輩出しているという程度の知識だけでしたが、一度見学会に参加した時に、不思議と受けてみようという気持ちになったのです。

ただ、現場に漬かりっきりで臨床しか知らなかった私にとって、松下政経塾の入塾選考は受けることだけでも正直大変でした。書類選考用の書類作成から始まり、合宿選考を含めた一次から三次の試験を受けるために、忙しい臨床の合間をぬって茅ヶ崎の松下政経塾まで何度も通いましたが、試験内容も歴史や経済、政治など今まで触れたことのない分野ばかりだったので、まったく自信がありませんでした。そのため合格を頂いた時には正直とても驚きました。

プラスαの道はどうであったか、何を学んだか

ただでさえ医師不足が叫ばれる中、臨床現場を離れることには自分の中でも強い抵抗があり、最終的に入塾を決めるまでの期間は人生で最も悩んだ時期であったといっても過言ではありません。

ただ、一方で政経塾在塾の3年間は、反面、とても貴重な経験をさせて頂いたと思います。

1年目は政経塾のカリキュラムに則って、医療以外にも様々なことを学ばせて頂きました。政治や経済の講義を受け、また工場の作業員や販売店の店員としてそれぞれ現地で数週間働き、さらには陸上自衛隊に体験入隊するなど、実に様々な現場に赴き、現地の人々と共に汗をかきながら学んだことは医療制度を考えるうえでもとても貴重な資材になっています。同時に、医療関係では個別の活動とは別に同期生と一年間の共同研究として在宅医療を取り上げ、議論を尽くしながら、政策案としてまとめていきました。

2年目以降は個別活動の期間となったため、国内外を問わず幅広く勉強をさせて頂きました。特に海外は五カ国(豪・英・仏・独・加)を巡り、各国の医療制度と日本の医療制度との比較をまとめ、自分なりに日本の医療制度に対する処方箋を描くことができました。

これらの研修を通して、日本という国家像やその国民性、日本の医療制度の歴史という縦横の糸を紡ぎ、その中であるべき日本の医療の理念など、自分なりの答えを出していくことができました。

日本の医療制度に対する国内での批判はよく耳にしますが、私は実際に他国の制度に触れてみて、各論は多々あれど、国際的にみて優れた面も多いと思っています。これは制度そのものという面もあろうかと思いますが、日本人の勤勉性や職業倫理の高さなど、その国民性に起因するところも大きいと思います。

現職に+αはどう生きているか、または現職が+αそのものの場合は、臨床経験が現在どう生きているか

5年間という臨床経験は、臨床医を名乗るには十分ではないかも知れません。ただ、それでも卒後5年を半ば院内に住み込みながら過ごしたことで、最低限臨床の基礎を身に着けることはできたと思います。これは医学的なものの見方や考え方はもちろん、社会人としてのマナーや、死を看取ることの意味など、現在も頻繁に振り返り、とても考えさせられています。

今後どのようにキャリアを形成していくか

医療とは地域に根ざしたものであるという考えのもと、政経塾で学んだことを具体化していきたいと思います。

春に政経塾を卒塾してからは地元・産業医科大学の公衆衛生学教室で医療政策について勉強をしています。また、同時に臨床医として働きながら地域医療から学んでいるところです。そして今秋からはロンドン大学の大学院に留学予定で、最先端の医療経済を学んできたいと思います。

日本の医療制度は総じてよくできていると思う反面、現行の医療制度が今後世界でも未曾有の超高齢社会を経験する日本において、いつまでも今の形のまま存続しうるかは大きな疑問だと思います。

超高齢社会に持続可能な医療の姿を探求することを自らの使命として、今後何らかの形でその制度設計に少しでも携わることができれば幸いです。

ブログ・ホームページなど

・松下政経塾HPプロフィールhttp://www.mskj.or.jp/profile/tomioka.html
・入塾の経緯から卒塾に向けての思いhttp://www.mskj.or.jp/getsurei/tomioka1101.html

著書など

・「臨床医のためのパブリックヘルス」中外医学社(共著)

ご自身が紹介されたマスコミ媒体など

・南山堂「治療」2010年11月号
・Doctor’s career REUTERS Japan school seeks solutions to leadership gulf
http://www.reuters.com/article/2009/05/11/us-japan-leadership-idUSTRE54A00O20090511

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