+αな人

渡部 明人 (その2) 氏

すべての人の健康を確保するためのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ

氏名 渡部 明人 Akihito Watabe, MD. MSc.
年齢 32歳(2015年1月時点)
現在の職業 国家公務員(外務事務官)
→国際公務員(保健財政専門官)
現在の勤務先 外務省国際保健政策室
→WHO本部保健システム・ガバナンス・財政部門
出身大学・学部 北里大学・医学部・2007年卒
ロンドン大学公衆衛生熱帯医学大学院及び経済政治科学大学院・保健政策計画財政修士課程・2013年修了
臨床専門分野 総合診療・診断学
前回の記事投稿 医師として健康的な社会創りに貢献したい(2012年8月)
リンク先 http://rinsho-plus-alpha.jp/people/akihito-watabe
プラスα道後の臨床経験年数 3年

watabe-akihito2

1)現在何をされているか、および前回記事投稿以降の経過(職歴ほか)

バヌアツでの保健政策の仕事を踏まえ、2012年の夏から1年間、ロンドン大学の公衆衛生熱帯医学大学院(LSHTM)と経済政治科学大学院(LSE)のジョイントコースである保健政策計画財政修士課程(HPPF)で、医療経済学や保健財政学を中心に学びました。また、大学院の教授の紹介で、タイの政府系シンクタンクである国際保健政策プログラム(IHPP, Thailand)の短期研究員として、途上国のヘルスプロモーション財政の研究に従事しました。

2013年の夏には、外務省国際保健政策室の外務事務官(保健システム評価・医療経済分野)として採用され、日本政府の国際保健外交戦略の実施に注力しました。具体的には、国連でのポスト2015年開発アジェンダの議論において日本がユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進を主導するための調整、保健財政案件の形成、革新的資金調達メカニズムやエボラパンデミック対策などに携わりました。

2)プラスαの道はどうであったか(あるか)、+αを学ぶ中でどういった学びがあったか(学んでいるか)

途上国の医療現場、保健政策の立案を途上国政府で経験した上で、国際保健外交に関われたことで、国際社会のアジェンダ設定から医療サービスの提供まで国際保健協力の一連のプロセスを学びました。国際社会における日本のプレゼンス、ODAに対する納税者へのアカウンタビリティー、二国間や国連機関との関係など、外交の視点から様々な影響に配慮する必要がありますが、最終的には途上国に住むひとりひとりの健康に貢献できるよう、現場での経験を思い出し、実際に現場に出向かれている方々の話を伺いながら仕事をするように気をつけています。

また、国際保健外交は、医療や公衆衛生だけでなく、国際政治、国際法、経済、貿易、マネージメントなど幅広く関係しており、国際保健を取り巻くダイナミズムを感じることができます。例えば、ポスト2015年開発アジェンダの議論では、保健分野のアジェンダであっても、ジュネーブ(WHO本部のある都市)では純粋な保健課題が議論されますが、ワシントンDC(世界銀行本部のある都市)では経済開発の観点から保健の投資効果や他分野への波及効果が議論され、ニューヨーク(国連本部のある都市)では各国連加盟国の関心事項に関わるメッセージ性や先進国と途上国のパワーバランスといった国連政治に基づいて議論が展開されます。こういった異なる背景を理解し、それぞれの場に合わせた保健の議論を展開するよう手探りで学んできました。

その他、近年は国際保健でも官民連携や民間ノウハウの活用に注目が集まっており、円借款事業のゲイツ財団との連携、官民ファンドによる医薬品やワクチンなどの公共財への投資、日本の医療産業の国際展開といった新たな領域にも一部関わりました。政府機関や国連機関以外にも、国際保健分野の課題解決にインパクトのある様々な活躍の場が増えてきており、キャリア選択肢の広がりを感じています。

3)何故現在の職場を選んだのか(動機)、どのようにして現在の職場に入ったのか(経緯、方法)

途上国のUHCに貢献する機会として国連機関の空席ポストを探していたところ、偶然外務省が医療経済・保健システム評価分野の任期付き正規職員を公募しているのを見つけ、応募しました。2013年5月に日本政府が国際保健を外交の重点課題として位置づけた国際保健外交戦略を打ち出したため、今後15年の世界的な目標設定におけるUHCの扱いに、外交を通して影響力を与えられると考えたためです。

幸運にも採用頂き、大学院修了に合わせて外務省で働く事となりました。こういったポストの定期的な採用は無いため、転職のタイミングや自分の専門性に合うかどうかなど不確定要素も多いですが、機会があればこういった任期付きのポストに応募することもグローバルヘルスのキャリアステップの一つとして考慮することをお勧めします。

4)今後どのような方向に向かうか、どのようなキャリアを形成していくか(今後の夢、可能性)

この1年半で国際社会におけるUHCの認知度や支持が徐々に高まり、SDGs報告書や国連事務総長報告書にもUHCが明記されることとなりました。次は途上国政府がUHC達成に向けて取り組む過程を、保健財政の専門家として支えていきたいと考えています。その第一ステップとして、2015年春からジュネーブにある、世界保健機関(WHO)本部の保健システム・ガバナンス・財政部門の保健財政専門官として働く予定です。

この分野の専門家はまだまだ少ないですが、例えばUHCをリードする世界銀行のジム・キム総裁は医師でもあり、WHO専門家としての経歴もあります。国連機関、開発銀行、民間援助機関、大学などで専門性を高めながら、グローバルヘルスリーダーとしてのキャリアを着実に築いていきたいと考えています。

5)同じ道を志す方への助言

グローバルヘルスはキャリア形成に時間のかかる分野なので、この道を志した初心を忘れずに地道かつ戦略的に。

 

ブログ・ホームページなど

外務省:保健分野のイニシアティブhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hoken/index.html
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの日:日本語版http://uhcday.jp/

新着記事

相互リンク

おすすめサイト