+αな人

飯田 恵美子 氏

病院薬剤師から臨床開発モニターへ〜ゴールはいつも患者さんの笑顔

氏名 飯田 恵美子 氏 Emiko Iida, MS, RPh
年齢 29歳(2009年8月現在)
現在の職業 臨床開発モニター
現在の勤務先 シミック株式会社
出身大学・学部 2002年 北海道大学薬学部卒業
2004年 北海道大学大学院薬学研究科修了
臨床専門分野 薬剤師
+αの道に入る前の臨床経験年数 3.5年
+αの道に入った後の臨床経験年数 0年
+αの道に入った際の年齢 27歳
+αの道の種類 臨床開発
photo_iida[1]

 

何故+αを選んだのか

大学時代、4年生から研究室に配属し、3年間研究漬けの毎日を送っていました。研究は好きでしたし、研究職という道も考えましたが、人対人のコミュニケーションをとりながらできる仕事がしたいと思い、資格を生かせる薬剤師という職に就きました。実際に薬剤師という仕事はやりがいのある仕事でした。大学で勉強した薬の知識はほんの一部に過ぎず、また医療業界は常に変わり続けているため、日々勉強であり、また実務としては医師や患者さん等と直接顔を合わせて仕事をする中で、医療知識に加えて対応力やコミュニケーション力を培っていきました。

薬剤師の仕事をしている中、既存の治療薬を持っても病を克服できない患者さんをたくさん見てきました。大学の授業で嫌気がさすほど多くの薬の名前を覚え、薬剤師として働き始めてからも新薬は数えられないくらい発売されています。それでも治すことのできない病気はまだまだあることを思い知らされました。病気の大小はあれど「治すことができない」というのは、その患者さんにとって、また医療の現場で働く私にとって本当に辛いことでした。そんなとき、同じ職場で働く薬剤師の先輩が臨床開発モニターに転職しました。それをきっかけに、私も臨床開発に興味を持ちました。新薬が万能ではないことも知っているし、自分が世紀の大発見をすることもできないけれど、今苦しんでいる患者さんの治療の選択肢をひとつでも増やすための小さな力になることができると知り、転職を決意しました。

 

どのようにして+αの道に入ったのか

まずは臨床開発に係わる仕事をしている友人、知人から実際の業務内容ややりがいを感じる点などを聞き、イメージを膨らませました。幸運にも前述の先輩薬剤師より開発業界に顔の広い方を紹介いただくことができたため、モニタリング業務だけでなく、品質管理等多岐にわたる業務を経験した方からもお話を伺うことができました。

その上で、臨床開発の入り口としてまずはモニターという職業を選びました。理由は単純です。需要が多いということと、少しでも現場の空気を感じながら仕事ができるということでした。

また、モニターとして経験を積むにあたり、国内外問わず幅広い分野の数多くの臨床試験を経験したいと考えたため、様々な製薬企業の開発に携わることができるCRO(Contract Research Organization:医薬品開発業務受託機関)を選びました。また、「CRO」は今でこそ認知されていますが、日本でのアウトソーシングの割合はまだまだ低いのが現状です。この業界が発展することは、より早く、より質の高い新薬の開発に繋がると考え、そこに少しでも貢献できたらと思っています。

 

 

+αの道はどうであったか、何を学んだか

モニターという仕事を通じて、医療の現場にいるときとは別の目線で医療の世界を学んでいます。現場にいるときには「今ある」治療法で医師や患者さんと向き合っていました。それに対して「今はまだない」治療法を探しているわけですから、目線が異なるは当然ですが、この仕事に就いて改めて実感しました。

治験薬には期待される効果だけでなく、望まない効果(副作用)もあり、何が起こってもおかしくありません。患者さんが目の前にいるわけではありませんが、モニタリングを通じて、現場にいる時以上に誠実に患者さんと向き合わなければならないと感じています。

また、日本ではドラッグラグが大きな問題となっています。恥ずかしい話ですが、薬剤師として働いている時には言葉は知っていても、その実態や問題点を知ることはありませんでした。臨床開発の仕事に携わるようになってから、その様々な側面を知りました。「遅い、高い、質が悪い」と言われている日本の治験ですが、質の高いモニタリングを行うことによって、その底上げに少しでも貢献できればと思っています。

 

現職に+αはどう生きているか、または現職が+αそのものの場合は、臨床経験が現在どう生きているか

なんといっても薬剤師として培った臨床経験、臨床知識がモニターとしての入り口を広くしてくれました。GCP(医薬品の臨床試験の実施の基準)やビジネススキルは一からの勉強でしたが、臨床現場での経験のあるおかげで、研修や実務(医師やCRCとのコミュニケーション、カルテ等)で飛び交う医療用語(病名、治療法、治療薬等)の中にすんなりと入ることができました。さらに、モニタリングを進める中、医療現場の目線、患者さんの目線から考えることにより、多角的な視点で、より良いモニタリングの提案をすることができました。

言うまでもありませんが、そんな時に、現場の医療があってこその臨床開発なのだと実感し、また、現場を知っているからこそ、医師や患者さんがどのような薬を待ち望んでいるかをイメージしながら仕事をすることができると思います。今はまだ自分の関わった薬が新薬として上市したことはありませんが、現場を知っているからこそ、その喜びは誰よりも大きなものになると確信しています。

 

今後どのようにキャリアを形成していくか

この仕事を始めてまだ1年半。今はただひたすらにこの道をまっすぐに進むことしか考えられません。モニターとしてまだまだ未熟であり、学ぶべきことも山のようにありますし、新しい薬を世の中に届けることができたという喜びをもっと感じたいと思っています。薬剤師の時のように私自身が病気を患っている人に直接何かしてあげることができるわけでもないし、私がモニターとしてしたことはその薬が市場に出回るまでのほんのわずかな部分にしかすぎません。でも、私のモニタリングがまだ見ぬ患者さんの治療の選択肢を広げることに繋がると思うと、やはり「人対人」であることを実感しますし、日々のモニタリング業務にやりがいを感じます。今後の自分の進む道はきっと何本にも分かれていることと思います。モニターとしてまっすぐに進むもよし、モニタリング以外の側面から治験を見るもよし、海外の治験に携わるのもよし、今の会社は自分から手を挙げればチャンスはいくらでも得られる場所です。この業界で患者さんの笑顔を直接見ることはできないけれど、どの道に進んでも結果として患者さんの笑顔に繋がると信じて、今はただひたすらにこの道をまっすぐに進んでいきます。

 

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