+αな人

樺島 沙織 氏

精神障がいのある人ならではの魅力を伝えたい

氏名 樺島 沙織 氏 Saori Kabashima, PSW
年齢 29歳
現在の職業 精神保健福祉士 ケースマネージャー
現在の勤務先 NPO法人ACTIPS 訪問看護ステーションACT-J
出身大学・学部 立教大学大学院・21世紀社会デザイン研究科在学中
2014年卒業予定
臨床専門分野 精神保健
+αの道に入る前の臨床経験年数 7年
+αの道に入った際の年齢 28歳
+αの道の種類 大学院入学
樺島 沙織

何故+αを選んだのか

現在勤めている精神保健分野のNPO法人では、24時間365日体制の多職種チームを組み、在宅で暮らす精神障がいを持つ方々のもとに訪問をして、生活支援と就労支援を行っています。臨床の中で、医療や福祉の枠だけでは解決できない課題があると感じたことが大学院で学ぼうと考えたきっかけです。

精神障がいのある人の中には、不安や心配から、社会や人とのつながりを取り戻すことが大きな障壁となる人もいらっしゃいます。在宅訪問すると、その方の興味のあることや、関心のあることが見えてきて、これからへの一歩を踏み出すことにつながることもあります。私は、臨床の中で、病気や苦労への対処をしながら少しずつでも、人とのつながりを取り戻し、希望に向かって行動していく彼らの姿に、人が生きていくことの力強さや豊かさや、多くの可能性があることを教えて頂き、感銘を受けています。

しかし、従来の精神保健分野の枠や障がい者雇用の枠の選択肢の生活を余技なくされる現状もあると考えられます。もっと地域で働ける場や活動できる場の選択肢ができることで、一歩を踏み出すことができる人はたくさんいるはずであると感じています。

そこで、地域コミュニティについて様々な角度から学ぶことや、医療や福祉の分野だけではなく、他分野の人々との協働の中で新たな可能性を見出していくことはできないものかと考えました。さらに、事業として運営していく手段としてのNPOマネジメントやソーシャルビジネスについて幅広く学んでいき、実践につなげていきたいと考え、働きながら大学院で学ぶ道を選びました。

どのようにして+α道に入ったのか

もともと、社会や人々にとってよいことを事業化するようなソーシャルビジネスに関心を持っていました。

本格的に学んでいきたいと考えて、インターネットで検索したときに、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科を知りました。そして、たまたまその週末に進路相談会(年2回開催)があり、「これはいくしかない!」と感じて、相談会にいきました。そこで、日頃臨床で感じている課題と大学院でどのようなことが学べるのかについて、教授と院生にじっくり相談しました。

21世紀社会デザイン研究科は、単に学問を学ぶのではなく、実践の場との両輪をまわすことを大事にしているところに惹かれました。社会に起こる様々な課題を、一つの分野で解決を目指すのではなく、多分野で協働しながら解決を目指す姿勢や、ソーシャルビジネスやNPO・NGOマネジメントや実践者の人材育成に力を入れているところから、ここで知識や考える力を養いたいと感じ、出願の準備をはじめました。

具体的には、自分が入学後に取り組みたい研究課題の規定の計画書を作成し、履歴書、推薦書等のその他の出願に必要な書類を揃えて出願しました。研究計画書の作成は、年末年始の休み返上で取り組みましたが、自分の原点やこれからどんなことを目指していきたいのかを考えていく貴重な機会でした。

一次審査を終えてから、二次審査の口答試問を受けて研究計画書について4人の教授から質疑と鋭い指摘を受けました。後日に合格発表があり、無事に入学することに至りました。

プラスαの道はどうであったか、何を学んだか

教授や講師の先生方は、様々な領域の実践の現場を踏んでいる方ばかりで授業はとてもおもしろいです。これまでに考えてもみなかった問いの投げかけやディスカッションを通して、物事の捉え方や背景を考える大切さを学んでいます。例えば、医療・福祉に「アートの可能性」と新しい視点を学び、フィールドワークをして視野を広げています。

また、院生の方々との出会いはとても貴重です。これまでに出会うことのなかった様々な業界の方との出会いはとても刺激的です。それぞれに携わっている分野は違うけれども、社会や人にとってのいいことを考えるときに、どこかつながってくるところがあるころがとても興味深いです。私は、医療・福祉の現場に携わる中で、その他の分野の方々とそれぞれの視点を用いて一緒に考えていくことで、新たな可能性を生み出していけるのではないかと感じています。

現職に+αはどう生きているか、または現職が+αそのものの場合は、臨床経験が現在どう生きているか

私は、臨床の中で、精神障がいのある人の生活の選択肢を広がるような取組みをしていきたいと考えていましたが、どんなことが障壁になっているのか、なぜそれが必要なのかとより具体的に考える必要性を学びました。そして、「精神障がいのある方のために」だけではなく、「精神障がいのある人によって」どんな良さがもたらされているのかというプラスに変換していく視点を持ち、この先につなげていく大切さを学んでいます。コミュニティでの場つくりを学んだことから、地域の活動やイベントに参加する糸口を知り、少しずつ歩み出しています。

先生や先輩や院生仲間からの学びを受けて、これからに一歩一歩進んでいきたいと考えています。

今後どのようにキャリアを形成していくか

昨年の7月に厚生労働省は、精神疾患を5大疾病に加えました。現代社会の状況が影響しているといわれています。

誰にとっても身近な問題になりつつありますが、世の中の多くの人は、精神疾患について知らないという現状があるように考えられます。そのため、どのように対処をしていいかわからないということや、社会や人とのつながりに障壁ができ、上手く関係性がとれない状況が「障害(障がい)」となっているように感じられます。

精神障がいのある人の中には、従来の精神保健分野の枠や障がい者雇用での枠での選択肢で生活している方が多くいらっしゃり、地域社会との隔たりが少なからずはあるのが現状であると考えられます。私は、彼らと関わる臨床の中で、病気への対処方法は、実にユニークな発想を用いて、人が生きていく上で困難なことや障壁となることが起きたときに、対処できる力を養うことにつながり、現代社会を生き抜いていくための先駆けとなる取組みであるとも考えています。

また、アートを切り口として、障がいのある人の「エーブルアート」に着目しています。障がいがあるからこその表現される豊かさがあるようです。人の表現する力ってすごいなと感じます。

こうした精神障がいのある人ならではの凄みや魅力や豊かさを肌で感じられるような場ができることで、彼らに対する理解につながり、関係性ができていき、そこから、地域での活動や仕事の選択肢を増やして、彼らが社会参加をしていくことにつなげていきたいと考えています。そうしていくことによって、より広く社会で困難さを抱えている人の問題解決にも役立ちますし、それぞれの能力や可能性を活かし多様な形で参加できる社会は、多くの人にとっても生きやすく豊かな社会につながるのではないかと考えます。

まずは、臨床の中で、精神障がいのある人ならではの凄みや魅力や豊かさを伝えたり、肌で感じられるような場や機会をつくることに、日々チャレンジしていきたいと思います!

ブログ・ホームページなど

NPO法人ACTIPS訪問看護ステーションACT-J http://actips.jp/
立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科 http://www.rikkyo.ac.jp/sindaigakuin/sd/

著書など

IPSブックレットシリーズ第3巻「リカバリーと働くこと」(共同著書)

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