+αな人

岩本 大希 氏

日本一若い訪問看護ステーション所長が行く!

氏名 岩本 大希 氏 Taiki Iwamoto, RN
年齢 24歳
現在の職業 訪問看護ステーション所長 看護師
現在の勤務先 ケアプロ株式会社 ケアプロ訪問看護ステーション東京
出身大学・学部 慶應義塾大学・看護医療学部・2010年
臨床専門分野 救命救急、集中治療、在宅医療、緩和ケア
+αの道に入る前の臨床経験年数 2年
+αの道に入った後の臨床経験年数 1年
+αの道に入った際の年齢 24歳
+αの道の種類 在宅医療 経営管理
岩本 大希

何故+αを選んだのか

【東日本大震災への支援がきっかけとなって】

ワンコイン健診を展開するケアプロ株式会社が、訪問看護を開始する決断のきっかけになったのは、東日本大震災の被災地支援でした。

ケアプロの看護師は、宮城県石巻市の避難所を回って、感染対策や健康状態のチェック、医療機関受診のサポートなどを行いました。避難所には、津波で薬が流された方、かかりつけの医師が亡くなってしまった方、家族を失って夜も眠れずに精神的に不安定な方が大勢いました。医療機関に通えない方が多かったため、避難所への訪問看護のニーズを強く感じました。そこで我々は、石巻市の訪問看護ステーションの皆さんと一緒に「石巻地域医療復興会議」を開催して、地域の訪問看護ニーズを共有し、訪問看護導入がスムーズに行なえるよう活動しました。

【救命救急センターでの臨床経験を通して】

私は、この事業を立ち上げる前まで、大学病院の救命救急センターで看護師として従事していました。地域医療の中核を担っていたセンターには、具合の悪くなった方や様々な事故に遭われた方が連日連夜運ばれてきました。そこで、救命医療の重要性を学んだと同時に、回復していく人々の転床・転院・退院がスムーズにいかないケースがあることも学びました。また、もし看護師が家で看てくれる環境さえあれば、自宅へ帰れるケースが多いのでは、と感じていました。

回復した方が適切なタイミングで退院ができないと、治療とケアが必要な方へ、必要な時に提供できない問題があることを肌身で感じ、入院している方々が、もっとスムーズに自宅へ帰れる環境を作っていかねばならないことに気づきました。

【在宅難民30万人の時代に】

東京の訪問看護ステーションに話を伺いに行くと、「看護師が不足していて、訪問看護の受け入れを断らなければいけないことがある」「働いている看護師は主婦が多く、夜勤や土日祝日の勤務が難しいため、訪問看護の24時間対応や土日祝日の対応が難しく、ターミナルの方や難病の方など医療依存度が高い方をお断りしなければいけないこともある」「そもそも●●地域には訪問看護ステーションがないので我々も時間をかけて行かなければならない」という実情を伺うことができました。在宅で安心して療養生活を送り、看取られる環境が十分に整っていないことはすぐにわかりました。

一方で病院の看護部長や地域医療連携室のソーシャルワーカーの方々からは「在宅で最期を看てもらいたいという患者さんは多いけど、受け入れてくれる訪問看護ステーションを探すのが大変」「今後、さらに高齢者が増えるので、訪問看護が増えてくれないと・・」「例えば小児の場合は●●地域に訪問看護ステーションがなくて困っている」などの意見がありました。

マクロ的に見ても訪問看護の需要が増える一方で、供給が追いついていません。訪問看護の利用者は、2012年現在で約38万6000人。10年前の23万7000人と比べ、約15万人も増えている。一方で、訪問看護ステーションで働く看護師は、2010年で約3万人と横ばい傾向にあり、10年前と比べ約4000人程度しか増えていないことがわかります。2020年に看取り場所がない「看取難民」が約30万人と試算されています。(我が国医療についての基本資料 中央社会保障医療協議会(H23))。

被災地をきっかけとした体験、自身の臨床経験を通じた問題意識、迫りくる社会背景が、この事業立案のきっかけになりました。

どのようにして+α道に入ったのか

上記の救命救急センターでの臨床経験を積んでいる中、大学の先輩であるケアプロ株式会社の川添社長と、N-loungeという異業種交流会でお会いしました。そこで、ケアプロが東日本大震災への支援をきっかけに在宅医療のニーズを感じているという話を伺い、これをチャンスと捉え、ケアプロで訪問看護ステーション事業を新規事業としてチャレンジさせてほしいとお願いしました。

その後、実際の立ち上げ前に病院で勤務する傍ら、湘南藤沢地区にある訪問看護ステーションにて勉強をしました。そこで、実際の訪問でのコミュニケーション、看護技術、在宅領域ならではのアセスメント技術を学び、また事業所を運営するにあたっての保険診療上のルール、他職種との細やかな連携の必要性、必要な事務書類とそのルールを叩き込んで頂きました。

プラスαの道はどうであったか、何を学んだか

地域では、本当に多くの方が看護師を必要としていることを再認識しています。依頼の多くは、夜間の緊急対応が必要であったり、土日祝日の訪問が必要であったりというケースです。

たとえば大学病院などの大きい総合病院からの依頼では、末期がんで予後が1-2週間で或るにもかかわらずご自宅に帰りたい方や、大きな傷や褥瘡があるため毎日処置が必要な方。地域の中核病院からは、神経難病で24時間対応が必要な方や、退院直後で手厚く介護・医療サービスが必要な方。地域のケアマネージャーや医師、看護師からは、認知症で独居の方や、疾患が複雑な社会背景をお持ちの方、仕事があるため夜の定時訪問を希望する方など、何れも生活習慣や疾患の状況により、看護師による24時間の緊急対応や祝休日の対応が望まれています。

看護師がいることで、安心してご自宅・地元の地域で暮らすことができる人がとても多いことを感じています。また、病院へ退院調整に伺うことを積極的にしており、地域の病院の退院調整に関わる方々とのコミュニケーションが重要であると認識しています。病院側がスムーズに退院を支援できる環境の一助を担うことで、地域で治療を必要としている方々がより適切に入院治療を受けられることができる、そのように大きな視点で医療と街づくりを考えるようになりました。

また、利用者からのニーズだけでなく、働き手のニーズも強く感じています。「20代で訪問看護ステーションの所長になれる」というセミナーを開催するなどして、若手看護師で、訪問看護に関心のある仲間が集まってきます。直近の入職予定者は、福岡、鹿児島、沖縄など全国から集結してきています。東京で訪問看護の現場と経営を学んだ仲間が、全国で在宅医療を展開していくためにも、自分自身がロールモデルとして果たす役割は大きいと思っています。

現職に+αはどう生きているか、または現職が+αそのものの場合は、臨床経験が現在どう生きているか

救命救急センターでの経験は、今でも私の中で、さまざまなことを示唆してくれています。全身状態のアセスメント、傷や褥瘡の処置方法、転倒や急変時の対応、日常生活リハビリ、亡くなった後のケアなど技術的な面で、臨床経験が基になっています。また技術や知識だけではなく、危機的状況にある家族や本人とのコミュニケーションにおいても、救命救急センターで培ったものが活きています。

今後どのようにキャリアを形成していくか

私は、医療を通じて日本が良くなればいいな、と考えています。そのためには、今ある問題をひとつひとつ解決していかなければなりません。日本の社会保障という大きな枠組みの中で、看取り難民、老老介護、救急車たらいまわし、在院日数問題、医療費増大、僻地医療・・・などなどたくさん問題を孕んでいますが、これらを解決する策の大きな一つに在宅医療があると考えています。

ケアプロでは、来年3月に高齢者専用賃貸住宅の1階にテナントとして新たなサテライトステーションを開業する予定です。また、来年4月から新卒看護師が訪問看護ステーションで働けるようになるための教育プログラムの共同開発、がん末期のターミナルの方のシェアハウスの運営に関わるなど、様々なモデルの構築をしていきます。

自分、或いは大切な人が病気や障害を持った時に、自宅で暮らしていくことを当たり前のように選択できる。そのためにはもっと多くの看護師が地域で活躍できるよう、その場所を広げていきたいと考えています。実現するためには、質の担保・教育・財務などの適切なマネジメントと仕組み化、および地域でのスムーズな情報連携のためのハード・ソフト面での整備など課題が多くありますが、一つ一つチームで乗り越えていきます。既存の他事業所との合併や間接業務の海外へのアウトソースなど様々な経営手法を駆使していくことも検討しています。

また、今は訪問看護に関わっていますが、ケアプロは「革新的なヘルスケアサービスをプロデュースして健康的な社会を作ること」がミッションのため、社内・社外のリソースを最大限に活用して、在宅医療だけでなく、本当に社会にとって必要なサービスというものを今後も提供していきたいと考えています。

ブログ・ホームページなど

ケアプロ株式会社ホームページ :http://carepro.co.jp/

ご自身が紹介されたマスコミ媒体など

ナース専科で連載予定です!

 

 

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