+αな人

山田 洋太 氏

離島診療で気づいた医療経営・病院管理の大切さ

氏名 山田 洋太 氏 Yota Yamada, MD
年齢 31歳
現在の職業 内科医、大学院生
現在の勤務先 慶應義塾大学ビジネス・スクール(KBS)在籍中
出身大学・学部 金沢大学大学院医学研究科 2004年卒業
臨床専門分野 一般内科医
+αの道に入る前の臨床経験年数 5年
+αの道に入った後の臨床経験年数 1年
+αの道に入った際の年齢 30歳
+αの道の種類 経営学
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何故+αを選んだのか

私は金沢大学を卒業後、沖縄県立中部病院で2年間初期研修を行い、さらに1年内科後期研修を行いました。その後久米島という8500人の島で総合内科医として2年間診療をさせてもらいました。この離島には2次救急までの公立久米島病院(40床)しかなく、内科医4名、小児科医1名、整形外科医1名の6名で入院・外来・救急・透析・小手術・予防接種・検診を行っていました。沖縄本島に負けないような医療を提供したいとチーム一丸となって地域医療に取り組んだ結果、頑張れば救急受診する患者数が減少することを肌で感じました。しかしアセスメントの甘かったものや手を緩めたケースはすぐに悪化しヘリコプターで緊急搬送することもありました。

そんな中、現場がどんなに頑張っても病院管理や経営という課題に対しては微力であることも知りました。この管理や経営という分野には高い専門性があり、そのようなレベルを実施してこそ病院存続が可能であることを私は感じました。

多くの自治体病院が赤字であり、その必要性も問われる中、現在の医療機関におけるhospital staff(病院事務)の専門性の低さを感じ、経営資源の“人・物・金・技術”すべてが不十分であると思いました。一方で、医療従事者は悪くないかと言えば、そうではなく、目の前の患者に入り込みすぎるために病院全体のことを考えていない、医療安全を含めた医療の質向上へはまだまだ努力が足りないなどの状況がありました。このような環境の中で医療従事者と管理経営する事務職との間のギャップを埋める必要性を感じました。

どのようにして+α道に入ったのか

このままいけば間違いなく地域の医療崩壊は進んでいく、そう感じるのは簡単でした。その崩壊をどうやって食い止めるのか様々な本を読み始め、勉強していた時に出会ったのがKBS田中滋先生の本です。

そこには病院経営・管理の基本的な考え方やツールが載っておりこれを知識として最低限使いこなす必要があると考えました。それがKBSに入ったきっかけです。またKBSがジェネラリストを育て、Tの字育成(ジェネラリストの上にスペシャリティを作る)というジェネラル志向の私としてはピッタリであり、授業形式もCase method方式としっくりくるものでした。

プラスαの道はどうであったか、何を学んだか

大学院生活最初の半年は、夜中の3時まで予習し、9時から授業という毎日でした。半年ほど経つと慣れて来るもので一般企業に就職しても何とかやっていける、そんな気になりました。

現在、リーダーとして最低限必要な経営の知識、マーケティング、組織論、生産政策、財務会計、企業戦略論、経済学などを学び、その他にも医療政策・アントレプレナーシップ(企業家論)などを自由選択で学ぶことができました。2年目からは田中先生のもとで医療経営や医療政策をさらに深めていく予定です。

こうした基礎的な勉強をするにつれて、決して医療は特殊ではないということ、病院トップが医師という不可思議な日本医療界への変革の必要性を感じました。トップたるもの最低限の経営知識は不可欠であり、優秀な医師イコール管理も優秀ではないと改めて感じました。年齢を重ねると医師から管理者へ変わっていくのが病院の現状です。しかし彼らの培ってきた臨床経験は何にも代えがたい宝であり、医師不足が言われている中、医療資源という観点からも不適切な配分だと考えます。

現職に+αはどう生きているか、または現職が+αそのものの場合は、臨床経験が現在どう生きているか

医療経営・管理の知識のこと、リーダーシップのあり方、意思決定や経営資源の配分などの知識を学ぶことができ、医療者とは異なる視点や考え方を身につけることができました。また同級生と議論を交わすうちに、論理的に意見を言い合う必要性、お互いを高め合う議論の仕方、グループのファシリテーションなどチームのパフォーマンスを最大限引き出すようなスキルを学びました。

限られた医療資源をうまく利用するには、効率性を高めるしかありません。無駄な委員会や会議を有用な病院経営・管理を決める重要な場、情報共有の場として変えていきたいと思います。

今後どのようにキャリアを形成していくか

KBSに来てわかったことが1つあります。ヘルスケア産業に優秀な人材が入ってきていないだけで、世の中には優秀な事務がたくさんいるということです。お金だけ追求する中で人生の目標を見失っている人も大勢います。そんな彼らを少しでも“やりがい”のある医療の世界へ導き、力を発揮してもらうことが私の重要な役割だと考えています。また医療従事者に対しても最低限レベルの医療経営・管理知識を広める必要性があり、それをやっていこうと考えています。

大学院終了後は、一般内科医として現場の最前線でまた医療に没頭しつつ、専門として医療経営・管理を行おうと考えています。現状がおかしいのであれば、愚痴や不満で終わらせるのではなく、アクションを起こさないと何も変わらないと思っています。よりよい方向へ日本の医療が進んでいくことを切に願ってやみません。

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